CIP ANNUAL REPORT 2024研究メンバー②政策医療を定義するための調査 先行文献をレビューすることで、今までの議論における政策医療の定義について確認した上で、医療政策専門家、公立病院の管理者、医療提供者、患者代表、保険者、自治体医療政策担当者などに対して、グループインタビューを行うことを予定しています。調査の目的は政策医療の定義と範囲についての概念を整理し、関係者の認識と期待を明らかにすることとします。さらに、デルファイ法と呼ば れる手法を用いて、グ ループインタビューで得られた情報を基に政策医療の詳細な定義と基準を専門家の意見を通じて精査し、具体的な政策医療の定義を形成します。 今 年 度 は、インタビュー 実 施 の た め の 対 象 やインタビュー方法についての研究計画を立案し、次年度の実施に向けた準備を行いました。県が設置する独立行政法人立病院の3分の2で、基準外負担金繰入が行われていました。このことから、政策医療の維持を目的として、多くの自治体が自治体財政からの経費負担が行われていることがわかりました。助成事業(科研費)基盤研究(C)」の助成対象となりました。今 後、政 策 医 療を定 義 するため の 調 査、公 立 病院の政策医療に関する産出と繰入金を加味した生産性の計算を順次着手し、最終的に公立病院における非政策医療の効率性の状況について研究を重ねて参ります。 本研究の成果は、神奈川県や 県内市町村をはじめとした自治体および 公立病院の経営効率化に資することが期待されます。30プロジェクトリーダー 渡邊 亮プロジェクトメンバー 成松 宏人 民間病院等で提供が困難な「政策医療」の実施が期待され、自治体等から税金が「繰入金」などの名称で投入されています。それでもなお、多くの公立病院では長期的な赤字経営が続いていますが、赤字の要因が政策医療の提供によるものなのか、経営効率を高める余地があるためなのかは、まだ明らかにはなっていません。 そこでプロジェクトでは、自治体による公立病院に対する財政投入と、政策医療の実施状況を明らかにした上で、財政投入の有効性?効率性を明らかにすることを目的として研究を行います。 政策医療の定義を明確化し、政策医療と非政策医療の別に投入?産出を評価することで、自治体における公立病院運営の持続可能性に向けた議論への示唆や、政策医療の経済性に関する知見を得ることが期待されます。ています。地方公共団体の公立病院に対する繰入金の状況と公立 ①病院の経営状態に関する実態調査 ②政策医療を定義するための調査 ③公立病院の政策医療に関する産出と繰入金を加味した 生産性の計算 ④公立病院における非政策医療の効率性の状況 上記のうち、本年度は①および②の一部を実施しました。①自治体の公立病院に対する繰入金の状況と公立病院の経営状態に関する実態調査 全国の自治体が公立病院に対してどの程度の繰入金を投入しているか、また、各公立病院の経営状態の現状について、総務省の作成する「地方公営企業年鑑」等を用いて実態調査を行います。公立病院に対する繰入金の大半は、国が定める特定の条件に基づいて、国から県?市町村に地方交付税として支払われますが、いわゆる「基準外負担金繰入」と呼ばれる、国が定める特定の条件を満たさない、自治体独自が負担して行う損失補填的な繰入も存在します。 今年度は、?地方公営企業年鑑?に基づくデータベースを作成し、経営状況や繰入金の状況に関する実態について分析を進めています。概要 県や市町村などの自治体が設置?運営する公立病院は、進□状況 このプロジェクトは、主に 4 段階に分けて実施を予定し研究成果や政策提言、地域と活動の結果 経営状態に関する実態調査に基づき、全国の都道府今後に向けて 本研究は、2025 年度の日本学術振興会「科学研究費地方公共団体による公立病院への財政資金投入とアウトカムに関する研究
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